元競走馬(サラブレッド、17歳、セン、約450㎏)を所有しています。
カイバは、乾草チモシー10~11㎏/日、ヘイキューブ1kg/日(ふやかしてリンゴ酢180~200mlを混ぜる。これを1/2量ずつ朝、夜給餌)です。
運動は、毎日1.5km程度の引馬をしています。 または騎乗常歩で散歩、週2日程度軽い馬場運動(常歩、速歩を混ぜて2km程度動かす程度です。 競技馬ではありません。
この馬は、過去に腸石症で開腹手術をしたことがあり、そのためか外科手術後はどうしても癒着が生じて腸管の動きが悪くなりがち…と獣医師の所見です。 時々、特に季節の変わり目に盲腸便秘など便秘疝をおこします。
便秘自体は、獣医師の指示で今までは輸液、フルニキシンメグルミン、ミネラルオイルの経口等の治療で1~2日適度で回復、その後硫酸マグネシウム50g/日経口投与2週間与えています。 獣医師は便秘予防のため、乾草(チモシー)を水に浸して給餌するようアドバイスがあって水に浸して給餌しています。その一方、浸した水を切った時にビタミンが水で流れて良くないという人もいます。 気温の高い時期は腐りやすい(朝は相給餌時に浸し昼用は朝浸したもの、夜は昼に浸した乾草を与える時間差にどのくらい影響があるかわかりませんが)とも言われます。
➀便秘予防に乾草を水に浸すことは有用ですか?
②乾草を水に浸して与える(水に浸しておいて水を切って与える)ことで健康上影響があるくらいビタミン等栄養素が損失しますか?
③事前に水に浸さずに、給餌前に乾草が湿る程度に水をかけて与えたら、ビタミン等の流出が防げるかと考えるのですが、便秘予防に効果があるでしょうか?
④食事に塩を加えるのは、飲水を促し便秘予防に有効でしょうか?(鉱塩はあまり舐めない馬です)有効な場合、1日どのくらい塩を与えるとよいですか?
⑤腸石症予防にマグネシウムを制限する方が良い(アルファルファを制限)のですが、リンゴ酢を食べさせるためにヘイキューブをふやかしたものを使っています。預託先のスタッフはフスマ(1kg弱/日)に混ぜていたようなのですが、フスマの多給、連続給与はよくないと思い、ヘイキューブに替えました。この量(1kg/日)でも腸石症のリスクに影響があるでしょうか?
⑥飼料業者さんは、チモシー1番草より2番草のほうが栄養価は少し落ちるが軟らかくて疝痛予防になると勧められたのですが、有用でしょうか。(養老馬に近い生活をしているので、エネルギー的には足りるとも言われました)
他に便秘や消化管運動の衰えによる疝痛予防に有効な給餌に関するアドバイスがあれば、ご教授ください。
➀について
牧草に含まれている水溶性炭水化物(NSC)が馬の腸内環境を悪化させると考えられるため、乾草を水漬けしてNSCを流すことは疝痛予防に有用であると思われます。また、歯の悪い馬や咀嚼を十分にしない馬には咀嚼を容易にするため便秘疝の予防に効果があると考えられます。
②について
長時間の水漬けは水溶性ビタミンや一部のミネラルの損失を引き起こす可能性がありますが、30~60分程度の水漬けであれば、大きな損失はないと考えられます。
③について
湿る程度の場合、水溶性炭水化物(NSC)が十分に流れないと考えられるため、牧草全体をしっかり水漬けする必要があると思われます。
④について
ナトリウムは飲水を促す効果があることから、便秘予防になると思われます。
1日当たりの塩の給与量は1日20g程度であり、ふやかしたヘイキューブに添加して給与してください。
⑤について
明確な研究報告はありませんが、アルファルファが飼料全体に占める割合が70%以上の場合に発症リスクが高くなるとされていることから、現在の給与では問題ないと考えられます。
⑥について
柔らかい飼料の方が良く咀嚼できることから、疝痛予防になると勧めていると思われます。1番牧草と2番牧草で疝痛に影響が出るほどの差はないと思われるため、馬の嗜好性の良い牧草を給与してください。
現在の運動量では乾草を中心として給与し、エネルギーが不足する場合は水でふやかしたビートパルプやヘイキューブ、油等でのエネルギー補給をおこない、配合飼料や穀類などの濃厚飼料の給与は避けることが望ましいと思われます。
また、新鮮な水を常時設置する、食べこぼしがあるかどうかに加え定期的な歯のチェックや日々のボロの量ならびに未消化繊維質が増えていないかどうかなどの目視確認は日常管理において大切です。