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愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q56 春先に疝痛を起こす馬。

Q56 質問者:乗馬愛好家

16歳のウエストファーレンのせん馬を所有しています。
2点質問させてください。

(1) 疝痛について
頻繁に疝痛を起こします。特に5月から夏に入る前位の時期によく起こします。便秘のようで、疝痛の時は硬いボロをします。冬場にはそれほど疝痛は起こしません。

なるべく放牧場に出しているのですが、そこで毎朝3時間ほど生草を食べています。 それで生草がお腹で消化される時にガスになって溜まったりするのでしょうか?

(2) ビートパルプについて
また、カイバにビートパルプを混ぜて与えていますが1日に与えて良いビートパルプの総量はどれくらいでしょうか?

 

Answer

(1) 疝痛について
疝痛の発症リスク要因のうち、リスクが高い順にあげると

① 舎飼い(運動不足)。
② 穀類の過剰給与(過剰なデンプンが大腸にオーバーフローすることを原因とする腸内の微生物叢(びせいぶつそう)の混乱)。
③ 年間5回以上の飼料や給与方法を変更している。
④ 投薬中あるいは疝痛の履歴がある。
⑤ 水分摂取の不足(理想は自由に飲水できる環境)。
⑥ 繊維摂取の不足(牧草などの繊維質飼料の摂取不足、上記②と同意)。
⑦ 歯に問題があって十分な咀嚼ができない。

などが要因と考えられますが、生草の摂取がリスク要因であるという認識は通常ありません。
むしろ便秘が原因の疝痛(便秘疝)を発症時には改善を目的として推奨される対策と考えられます。

一方、春先の生草には水溶性炭水化物が多く含まれ、腸内の微生物環境を悪化することによるさまざまな影響が指摘されています(-ロカボな牧草を必要とする馬に- 《馬術情報》「愛馬のためのカイバ道場」 Vol.22(2018年5月号)をご参照ください。弊社のHPからも閲覧可能です)。

放牧地で3時間程度の生草の摂取機会があるとのこと、放牧地にどんな草が生えているのかは不明ですが、短時間に多量の生草(同時に水溶性炭水化物)を摂取したことで、腸内の微生物叢(びせいぶつそう)の混乱を招き、疝痛に至っていることは可能性として考えられます。

上記①~⑦を点検するとともに、放牧地の掃除刈りをする(草丈を10-15cm程度に刈り揃える)。
あるいはさらに放牧時間を短縮することも一案かもしれません。

(2) ビートパルプについて
ビートパルプは消化性が良好な繊維に富む飼料です。疝痛対策のために給与されているとのことですが、非常に理にかなった管理と考えられます(-スーパー繊維の異名を持つビートパルプ- 《馬術情報》「愛馬のためのカイバ道場」 Vol.17(2017年12月号)をご参照ください。弊社のHPからも閲覧可能です)。

適切な給与量は飼料全体の10%程度を目安としますが、与え始めはさらに少量からスタートする必要があります。 またビートパルプは水分を含むと体積が増加するので、安全のため給与前に30分~1時間程度の時間を掛けて充分に水漬してから給与してください。