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愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q38 穀類に代えて与える飼料

Q38 質問者:乗馬愛好家

競走馬を引退した馬を引き取り、現在は馬場を踏める馬に調教しているところです。カイバに麦を入れて与えていますが、まだ若いせいかよく入れ込むことがあります。麦に代わる飼料はないでしょうか?
また大豆粕をこの馬に与えるとすれば、1日に与える適量はどのくらいでしょうか。

Answer

馬のテンションを抑えるために、エンバクなどの穀類に代えて与えられる飼料としては、脂肪や高消化性繊維が代表的な飼料です。脂肪は、トウモロコシ油や大豆油などヒトの食事の調理で使われる植物油が嗜好性やコスト面からみて一般的です。これらの脂肪には1㎏あたり9Mcal(メガカロリー)ものカロリーが含まれ、エネルギー含量はエンバク(3Mcal/kg)の3倍にあたります。したがって、エンバク1㎏は植物油330gに置き換えることができます。ただし、植物油の一般的な1日あたりの摂取量は最大で500g程度ですので、エンバクであれば1.5㎏分が脂肪に置き換え可能な量と考えられます。また、1日に500gを与えるとしても、少量ずつ各カイバに混合して慣らせながら増量していく必要があります。馬術情報2016年10月号に掲載した『愛馬のためのカイバ道場』Vol3で「エネルギーの効果的な補給方法-その2「脂肪の効果」-として掲載していますので併せてご参考ください。(『愛馬のためのカイバ道場』のバックナンバーは当社のホームページから無料でご覧いただけます。)
脂肪の他に、ビートパルプや大豆皮などの高消化性繊維もエンバクなどの穀類の代替飼料として利用可能です。ビートパルプには2.8Mcal/kgとエンバクに匹敵する程度のエネルギーが含まれ、大豆皮にも2.3Mcal/kgと比較的高いエネルギーが含まれています。これらの飼料は牧草同様繊維質飼料なので、少々多めに与えても問題はありませんが、ビートパルプは水分を含むと膨張する性質があるため、給与前に水分を含ませてから給与した方が安全であることから、注意が必要です。
大豆粕は、タンパク質含量が40-45%と非常に高い高タンパク飼料です。給与しているイネ科牧草が低質である場合やアルファルファ乾草の併用が困難な場合など、飼料全体のタンパク質量を上げる場合に利用されます。したがって必ず必要な飼料というわけではなく、通常の飼料給与が行われていれば大豆粕の1日あたりの給与量は、0-300g程度であると考えられます。タンパク質の過剰給与は馬の水分要求量を増加させるとともに、排泄された余分な窒素によって馬房が汚染され、このことが原因で馬の呼吸器が侵される危険性もあることから注意が必要です。