11歳のサラブレッドのセン馬です。毎日毎回のカイバを食べる際にとても時間が凄く掛かかります。 時間をかければ完食はしてくれるのですが、とにかく食べるスピードが遅い馬です。
もともと性格的に神経質な面はあるのですが、馬房の中で安心して横倒しになって寝たりしていて、預けているクラブの環境が馬にとって居心地が悪いわけではないと思います。
ボディコンディションスコア(≪馬術情報≫「愛馬のためのカイバ道場」 Vol.4(2016年11月号)をご参照ください。弊社のHPからも閲覧可能です。)が上がりづらく、感覚的にBCS4~4.5 くらいの馬体です。食いつきが悪いわけではなく、カイバの時になればきちんと飼い桶に頭を突っ込んでいます。少しでも太らせたいと思い、ビートパルプ、食用油 (200cc弱/日)、大豆かすなども配合飼料に加えて与えています。それでもボディコンディションスコアにあまり変化が感じられません。(馬は動きも活発でとても元気です。)
もしカイバの食いが遅い事と摂り入れた栄養が馬体に付きにくい事に関係があるとしたら、どのような点を改善すれば良いでしょうか?食べても太りにくいハードキーパーの馬に対する飼料のアドバイスなどをお願いします。
食べても太りにくいハードキーパーの傾向がある愛馬には、すでにビートパルプや食用油、大豆粕なども添加されているとのことですのでそれらの飼料についての給与量はともかく、ご質問には別の観点から考えてみたいと思います。
まずは馬の健康については、①歯の不整がないかどうか ②胃潰瘍に罹患していないかどうか ③寄生虫が感染していないかどうか を確認する必要があります。いずれも獣医師に診断してもらうことになりますが、歯の異常がある場合は食べこぼしや垂涎、胃潰瘍でも重症の場合は垂涎などが確認されます。寄生虫感染の場合は糞中に寄生虫卵を認め、定期的な駆虫が必要と考えられます。
痩せ気味の馬に対する飼料給与の基本事項は、「良質牧草の自由摂取」です。また、放牧草が豊富な草地での放牧は馬のストレスを発散させ、軽~中程度の胃潰瘍であればそうした放牧で治癒することが多いとされています。
ただ、秋以降の季節では放牧地があってもその効果は望めないので、乾草の質を重視します。低質乾草、たとえば極端に色が悪い(茶色い)もの、カビの多いもの、変質して粘り気のあるもの(悪い発酵)、などは少なくとも避ける必要があります。
なお、嫌気発酵(良い発酵)されたサイレージはむしろ推奨されます。国内では北海道などの2番乾草として自家生産されることがありますが、輸入品のアルファルファサイレージが流通しています(製品名:ファイバープロテクト)。やや酸味のある発酵臭はありますが、一般的に馬の嗜好性は高いようです。これを少量ずつ与え始め、様子を見ながら1日に1㎏くらいを目標に増量していくことが推奨されます。来春になっても状態が改善されず、また放牧草給与が困難な場合は手間がかかりますが生草(ひとかかえ程度)を毎日与えるとよいかもしれません。
また、プロバイオティクス(≪馬術情報≫「愛馬のためのカイバ道場」 Vol.25(2018年8月号)をご参照ください。弊社のHPからも閲覧可能です。)の仲間は腸内環境の改善に有効と考えられます。さまざまなものがありますが、手っ取り早いのはイースト菌などの酵母です。
プレバイオティクス(プロバイオティクスの栄養源)としてオリゴ糖などがあり、これを含む配合飼料も市販されているようです。
すでにビートパルプを与えているとのことですが、ビートパルプ同様に消化性が高く、腸内で発酵性が高いとされる大豆皮や米ぬかも痩せ気味の馬に対する飼料として推奨されています。 あまり馴染みはありませんが、米ぬかであれば手に入れやすいかもしれません。まず最初に少量ずつから与え始めて、様子を見ながら1日に500g程度を目標に増量されてみては如何でしょうか。