8歳になる引退競走馬を引き取って乗馬にしています。少しずつ競技会へも連れて行くようになったのですが、競技会場へ行くと神経質な面を見せ、肝心な競技のときに力を発揮できません。
クラブでの練習時はとても調子が良く、輸送をしても発汗やイライラ、食欲不振などは見せません。まだ乗馬としての経験の浅さもあると思いますが、遠征先の試合会場では準備馬場は大丈夫でも、いざ本番となってメインアリーナに入ると物見が酷く、途端に神経質な面を見せます。
暴れたりするわけではなく、物見をして前に行かなくなる感じです。こういった緊張しやすい馬に対して飼料やサプリメントなどで少しでも緩和させることは可能でしょうか。
せっかく能力のある馬なのに力が発揮できないのが悔しいです。
愛馬は競走馬としての経験から競技や大会の雰囲気が神経面に作用していることは否めませんが、年齢はまだ8歳とのこと。乗馬としてはこれからさまざまな競技経験を積んでいく若馬であり、じっくり付き合っていくことが最も重要だと思われます。
さて、飼料や栄養面で問題の改善が可能であるか?とのご質問ですが、関連するテーマとして、
① エンバクやトウモロコシなどの穀類多給は精神的な異常を促す作用が指摘されている
② 必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンは馬の精神、神経を落ち着かせる効果がある
の2点を紹介させていただきます。
①に関して
その詳細な機序は不明ですが、競走馬や他の競技馬においても穀類多給によるタイイングアップ(≪馬術情報≫「愛馬のためのカイバ道場」Vol.10(2017年5月号)をご参照ください。弊社のHPからも閲覧可能です。)が指摘されるなど、特に神経質な馬には穀類の給与量を減らして牧草の給与量を増加させる管理方法が推奨されています。
その際、エネルギー量が不足する(ボディコンディションスコアの低下や体重減少)場合は、脂肪(エネルギーはエンバクの約3倍含有、コーン油や大豆油などの植物油として給与)を利用することが併せて推奨されています。また、通常の乾草以外に、消化性が高くエネルギー含量が高いビートパルプを穀類に代えて給与することも効果的と考えられます。
②に関して
トリプトファンは、ヒトにおいても精神安定を目的として処方されることがあり、馬でも同様の効果を得る目的でいくつかのサプリメントに添加されているアミノ酸です。 例えば<Pro-Dosa BOOST>や弊社販売の<エクイストロ・エクイライザー>にもトリプトファンが含有されています。 前者はトリプトファンのみならずさまざまなビタミンや微量元素を含むミネラル、アミノ酸が多岐にわたって配合されている総合的かつ競技前後の投与に特化したサプリメントです。
一方、エクイストロ・エクイライザーは神経質な馬に対して競技の数日前から投与する神経系の健康維持を目的としたサプリメントでトリプトファンの他に神経活動の正常維持に必要と考えられているビタミンB群やマグネシウムが配合されています。
推奨投与量に含まれるトリプトファンの量で比較すると、Pro-Dosa BOOST(1回80ml)では150㎎、エクイストロ・エクイライザー(1日20g)では2,000㎎と差異が認められます。馬が要求する1日あたりのトリプトファンの量は定かではありませんが、神経系の健康維持に必要な摂取量は1日あたり2,000㎎とされています。
以上を参考に、穀類給与量の再考とトリプトファンの補給を検討されることをお奨め致します。