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愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q41 PPIDの馬への飼料

Q41 質問者:乗馬愛好家

馬がPPID(下垂体機能障害)陽性と診断されました。15歳の中間種で、長毛になってきたのと目のあたりが膨らんできたことで疑って検査しました。少しでも改善しようと飼料全般を見直したいと考えています。 気をつけるべきことを教えてください。

配合飼料はエンバクの含まれていないもの400グラム/日を二回に分けて与えています。他はビートパルプと乾草です。その他、プレドミナントと、MSM、ケルプ、オメガ3のオイルを加えています。 もし差し支えなければおすすめの具体的な商品名を教えていただけたらと思います。配合飼料はシニア用のものを考えたほうがいいのでしょうか?また、おやつというかご褒美に今は馬のクッキーを与えていますが、他にご褒美として適しているものはありますか?

Answer

PPID(下垂体機能障害)発症馬への飼料給与に対する一般的な注意点は、穀類や糖蜜に多く含まれる炭水化物(デンプン、糖、フラクタンなど非構造性炭水化物-NSC-と呼ばれる炭水化物)の摂取量を極力少なくして、牧草などの粗飼料中心の飼養管理とする、ボディコンディションスコアの測定などによりそれでもエネルギーが不足すると判断された場合は、脂肪(コーン油などの植物油)や消化性の高い繊維飼料(ビートパルプなど)で補給することです。

 

PPID発症馬はインスリン感受性が低下していることが多く、できるだけ飼料摂取後の血糖上昇ならびにインスリン上昇を避ける必要があるからです。現状の飼料は概ねそのような原則に沿った選択がされていると思われます。配合飼料にはシニア用と銘打ったものもありますが、それらのすべてが低NSC飼料であるとは限りません。

 

したがって配合飼料ではなく、サプリメントタイプの飼料を一定量給与によってミネラルやビタミンを必要量供給できるもののほうが安心感はあります。とくにビタミンEや微量ミネラルであるセレンは抗酸化作用を有し、酸化ストレスに敏感とされるPPID発症馬には有益とする考えもあることから、こうした栄養素も含有されているサプリメントが推奨されます。このようなサプリメントとしてさまざまなものが販売されていると思われますが、弊社で取り扱っている商品ではエクイストロシリーズの「メガベース」がお奨めです。

 

また、乾草もさまざまで意外にフラクタンなどのNSCが多く含まれているものもあるようです。そこで、給与する前に乾草を30~60分間程度水に漬けることが推奨されています。このことにより、乾草に含まれる水溶性炭水化物の30~50%が除去できます。

ちなみに水漬した後の水には水溶性炭水化物が溶けているので、この水を馬に与えないように注意してください。一般的に乾草に比べ栄養価が低いと考えられている野草などを与えたくなることがありますが、これは逆効果となります。野草などは日照条件や肥料成分不足などストレス下で生育することが多く、こうした環境下で生育した植物体内にはフラクタンなどの形態で栄養成分が蓄積されていることが多いからです。

 

おやつとして与えるものは乗馬用ショップでさまざまなクッキーやスナックが販売されていますが、与える量はわずかですのでいずれでも問題はないと思われます。可能なら糖分が少ないものがベターかと思われます。馬が好むようならニンジンのぶつ切りでもよいかと思います。

 

なお、PPID(下垂体機能障害)に関連する記述が『愛馬のためのカイバ道場Vol.15高齢馬への飼料給与~ベテランパワー発揮のために~』にもあります。(日本馬術連盟発行・月刊『馬術情報』2017年10月号)当社のHPから無料で閲覧できますので併せてご参照ください。