飼育管理のプロが答える

愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q40 お腹ポッコリの馬

Q40 質問者:大学馬術部部員

私の馬術部で飼育している馬は、とてもお腹が出ていて太っているように見えます。お腹が出ているというのは、人間の中年男性の様な下腹がぽっこりした状態です。 年齢の違う5頭を飼育していますが、5頭とも同じような体型をしています。競技会の会場で他大学や乗馬クラブの馬を見てみると、下腹は引き締まりお腹の中腹が膨らんだ形をしています。ウチの大学が飼料をあげすぎているのかと思って、乾草は減らさず濃厚飼料を減らしてみましたが、あばらやヒバラの脂肪が落ちただけで、お腹の張りは取れませんでした。
普段の運動は速歩が中心で、駈歩はあまりしていません。5:2ぐらいの割合です。お腹が出ているというのは、そもそも健康状態に問題があるのか、また、お腹が出ている原因として考えられる要因は何なのか教えて頂きたいです。噂で、乾草と運動量が合っていないとお腹が出やすいと聞いたのですが、本当でしょうか?よろしくお願いいたします。

Answer

お腹が張っているのは、大腸が内容物で充満していることによります。では、なぜ充満しているのか?ですが、大腸内容物のほとんどを占める水分と牧草由来の繊維、とくに繊維の滞留時間が長いことが原因と考えられます。 乾草の質はさまざまですが、繊維成分が高い乾草を自由摂取させるとその消化に時間を要するため、(換言すると排泄を上回る速度で次から次へと繊維が大腸に送り込まれてくるため)大腸内容物量が増加します。若く消化管も健康な馬であれば、水分さえ自由に摂取できればこうした状態でも問題はありませんが、高齢馬では疝痛発症の原因となることもあります。対策として、(1)より繊維成分が低い(茎よりも葉の割合が多い)乾草に切り替える、(2)消化性の高い繊維飼料であるビートパルプを併用する、(3)ヘイキューブを給与前に水に漬けてふやかしてから与える、などが考えられます。
飼料から供給されるエネルギー量が馬の要求量に比べて少ない可能性も考えられます。このような場合、馬はより多くのエネルギーを摂取しようと繊維質の高い乾草を多く摂取し、結果的に必要以上に大腸内容物を増加させてしまう、というものです。運動量はそれほど多くはないようですが、馬体のボディコンディションスコア(月刊馬術情報2016年11月号『愛馬のためのカイバ道場vol.4』を参照ください。当社のHPからも無料でバックナンバーをご覧いただけます。)を測定するなどして、適切なエネルギーが供給されているかどうかを確認されることをお奨めします。 以上から、「乾草と運動量が合っていないとお腹が出やすい」という噂は的を得ていると言えます。