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愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q46 カイバでの油給与量 適切な割合について

Q46 質問者:乗馬クラブ・飼養管理者

以前、Q38の<飼料に代えて与える飼料> の質問のAnswerの中で <植物油の一般的な1日あたりの摂取量は最大で500g程度ですので、エンバクであれば1.㎏分が脂肪に置き換え可能な量と考えられます> との記載がありました。
それでは仮に1歳馬などに対して、カロリー計算ソフトで必要なエンバクの量が1.kgほどだった場合は、全てを油で代替しても構わないということになるのでしょうか。
弊社の従業員に『エンバクをやめて全部油にしたらよいのでは?』との質問を受けました。

油だけでエネルギー摂取をすることが良いわけないというのは何となくわかるのですが、論理的な説明が出来ないでいます。
① 油だけでエネルギーを摂取することに対してのデメリット。
② 油は体重の何%までにするべきなどの指針。
 について教えてください。

Answer

 Q38での回答は質問にもあるとおり、競走馬を引退した成馬で(かつ、ある程度の運動が負荷されている)「入れこみやすい馬」をイメージした記述内容となっています。
 したがって、若い馬で精神的にも問題がない馬にも油を推奨している訳ではありません。

 エネルギー供給のことだけを考慮すれば、理論上は1.㎏しか与えていないエンバクすべてを油(脂肪)に代替することは可能ですが、一方では穀類に多く含まれるデンプンのような炭水化物は、運動によって消費された筋肉中のグリコーゲン(速効性のあるエネルギー源)補充に重要な役割を果たすことから、運動後に与える飼料にはある程度構成されていた方が有益と考えられます。

 ですから、連日運動が負荷されており、日々消費する筋肉内グリコーゲンを早急に補給しなければならない成馬にとって、少なくとも運動後の穀類摂取は重要な意味があると考えられます。また、今後も運動が負荷されていく若馬に一定量の穀類を給与し、筋肉中のグリコーゲン再貯蔵システムを発達させていくという観点から、若馬にとってもまったく穀類を与えない給与方法は賛成できかねません。

ご質問にある<油だけでエネルギー補給する場合のデメリット>は上記内容にあたると考えられます。(ここでは他に牧草などの粗飼料も並行して給与されていることを前提としています。粗飼料からの繊維質供給やその摂取時の十分な咀嚼は馬の健康を維持する上で非常に重要な要件です。)

 油給与量の適切(効果的)な割合については、一般的には飼料全体の5~10%程度(重量比)とされ、これを超えてもさらなる効果は発揮されないとされています。

ここでいう飼料全体とは、粗飼料も含んでの1日あたりの総給与量(乾物換算)を指します。
たとえば1日に10㎏の飼料が与えられているとすると、油の給与量は500g~1000gとなります。ただし、ここで考慮しなければならないのは、牧草を含む他の飼料にも油が含まれており、それらも考慮して上記の値とするということです。
エンバクには4~6%、チモシー乾草には2~3%、アルファルファ乾草(ヘイキューブ)には2~3%、フスマには3~4%、配合飼料には4~12%の油が含まれています。たとえばエンバク1㎏とチモシー乾草5㎏与えられているとすると、すでに油は170g程度摂取していることになります。
 油の給与は、嗜好性を確認しながら少量ずつ増量し、1日の各回の飼いつけで均等に摂取させるよう併せて注意してください。